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「図説・17都県 放射能測定マップ+読み解き集」書評 市民が各地で続ける地道な調査

評者: 宮田珠己 / 朝⽇新聞掲載:2019年01月19日
図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集 2011年のあの時・いま・未来を知る 著者:みんなのデータサイトマップ集編集チーム 出版社:みんなのデータサイト出版 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784991042706
発売⽇: 2018/11/13
サイズ: 30cm/200p

図説・17都県 放射能測定マップ+読み解き集 [企画・編集]みんなデータサイト マップ集編集チーム

 2011年の福島第一原発事故以来、われわれは放射能に関するたくさんのデマや偽情報に翻弄されてきた。国や東電の出す情報が信用できないだけでなく、テレビも新聞も鵜呑みにできない状況が続いている。
 どうみても疑わしいのに安全を言い募るもの、心象だけで過度に危険をあおりたてるもの、そうしたたくさんのノイズに翻弄され、専門知識がない自分は、不安と後ろめたさを抱えながらも、気がつけば事故から目をそらして暮らすようになってしまった。当事者意識が足りないと批判されれば甘んじて受けるほかない。
 そんななかで手にとったこのデータ集は、市民が自らの手で放射能を測定しマップ化したもので、かなり公正な情報なのではないかという手ごたえを感じさせてくれた。
 市民がつくる全国33の測定室が、東日本17都県の放射能測定マップのほか、牛乳、米、川魚、海水魚、ジビエ、キノコ、山菜などについて汚染状況をまとめている。
 事故から8年近く経ち、本書からは、多くの品目で測定値が検出限界以下に下がってきている状況が見てとれる。一方でいまだ深刻な汚染が残る地域や品目も具体的に明示されている。
 廃棄物の管理状況にも懸念が多い。原子炉施設内で厳重に管理される放射性物質が100ベクレル/㎏以上なのに対して、事故以降8千ベクレル/㎏以下は一般廃棄物として処分していいという、被害をもたらした側に都合のいい法律がまかり通っている現状、チェルノブイリでは強制移住レベルの汚染区域が日本では避難指示区域外であることなど、国の対応のひどさには暗澹たる気持ちになってしまう。だからこそこうした取り組みが必要であり、地道に調査を続けられている方々に敬意を表したい。
 専門家でない市民が正確に測定できているのか気になるが、その技術的取り組みについても説明がある。
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 「みんなのデータサイト」は全国33の市民放射能測定室が参加するネットワーク型の団体(024-573-5697)。