「損して得取れ」という言葉を聞いたことがあると思う。
このフレーズは単純だが、奥が深いものだと感じている。「損して得取れ」が成立する場合もあるし、そうでない場合もあるからだ。※やみくもに実践しても、成立しないだろう。
今回は、「損して得取れ」という考え方について書いてみたい。
目次
損して得取れの意味
まず、「損して得取れ」の意味だが、
一時的には「損」しても、その損が将来の「得」になるのであれば、当初の損を厭うな、
という意味だと解釈している。目先の損得だけを考えて行動しても、トータルで(長い目で)考えれば損になることがある、ということを示唆しているのだろう。商売でよく言われる言葉だ。
※現在価値で比較したときに、「損<得」が成立するのであれば、損してもいい。
この言葉に異論はない。正しい考え方だと思う。
実践の仕方はむずかしい
ただ、実践の仕方が難しいな…とも思う。
その「損」が、将来十分な「得」になるのかどうかわからないからだ。
ただ、それがハッキリわからなくても、「損して得取れ」が機能する条件を満たしながら、実践した方がいい、というのがわたしのスタンスだ。余談になるが、本来、得は「徳」だそうだ。
得を徳にすると、言葉の意味が変わってくるので、ここでは置いておく。
ビジネスでは…
ビジネスの場合
ビジネスにおける「損して得取れ」を考えてみよう。
たとえば、見積もりの段階で顧客にグッズなどを与え、受注に結びつける、という手法がある。
見積もりの段階で「与える」ため、その時点では損になる。だが、その損が後の十分な利益に結びつくのであれば、当初の損には意味がある、ということになる。
スーパーなどにおける試食も同様だ。
試食には、食材だけの費用ではなく、人件費がかかる。
食材にかかる費用よりも人件費の方が高いと思うが、(試食を行うことにより)これらの費用を上回る利益を生み出すことができれば、当初の損には意味がある、ということになる。
※認知度の向上など、見えにくい利益もあるので、その評価の仕方は難しい。
損して得取れが機能する条件
今述べたどちらのケースも、返報性の原理(法則)を利用したものだ。
だが、それ以外にも共通点がありそうだ。それは、人と人との対面によるコミュニケーションが介在する、ということだ。顧客の立場から考えると、人と面と向き合うことにより、断りづらくなってしまうのだ。
※相手とコミュニケーションをとることで、返報性の原理(法則)が機能しやすくなる、ということだ。また、その人に対人スキルがあれば、返報性の原理が働く可能性はさらに高くなるだろう。
返報性の原理をどう働かせるか
対面によるコミュニケーションが介在しないネットビジネスの場合は、工夫が必要になる。
たとえば、お友達紹介で○○円キャッシュバックします、という場合は、サイトへの登録+取引を1度行う、などの条件をつける必要があるだろう。対面によるコミュニケーションが介在しない場合は、返報性の原理(法則)が働きにくくなるためだ(ただ、利用されることもよくある)。
人間関係では…
人間関係の場合
次に、人間関係における「損して得取れ」を考えてみよう。
人間関係において、最初に損をする、ということは、自分から相手に「与える」ということに相当するだろうか。※もちろん、相手に感じよく接したから損をする、などどは考えない方がいい。
相手に感じよく接する、笑顔を見せる、ということは、相手に自分から「与える」ということだ。自分から与えれば、相手から返ってくる可能性が高い(与えなければ、可能性は0に近い)。
出典:世渡り上手な人の特徴
また、相手を(見返りを求めず)ヘルプする、ということもそうだろう。
ここにも、返報性の原理(法則)が存在する。人は好意的に接してくれると、好意を返そうとするものだし、その逆もある。特に、相手との関係が続く場合は、「損して得取れ」が成立する可能性がかなりある。※二者の間で「好意のやりとり」が発生することで、関係が深く良くなるのだ。
※与えた本人から直接的な見返りがないとしても、まわりからの評価が上がる、敵ができないなど、間接的な見返りはあるだろう。なので、かけた情、与えた情は流すことが必要になる。
損して得取れが機能する条件
「損して得取れ」が働く条件だが、
「受けた恩」は忘れないようにしましょう。つまり、「掛けた情けは水に流し、受けた恩は石に刻め」を実践することです。
出典:「情けは人のためならず」を戦略的に考える
先にも述べたが、相手に見返りを求めない、ということだ。
相手に見返りを求めれば、相手から見返りがない場合に腹が立つ。相手に腹を立てると、その感情は相手に伝わり、あなたが相手に対して行ったことは、無に帰してしまう(無どころか、マイナスになることもある)。なので、上で述べた「間接的な見返り」で満足した方がいい。
エゴイストに利用されないようにする
ただし、注意した方がいいこともある。
いわゆる一定の割合で存在する「エゴイスト」に与えることは、あなたにとってマイナスになります。あなたが彼らの食い物になってしまう…ということです。あなたは疲弊し、誰に対しても与えることをやめてしまうかもしれません。
出典:「情けは人のためならず」を戦略的に考える
エゴイストに利用されないようにする、ということも大事だ。
自分が与えることで疲弊している…と感じるのであれば、やめることだ。(意識的かどうかにかかわらず)悪意を持つ人、というのは、一定の割合で存在するので、そこに引っかからないようにすることが大事だ。※与えて潰れてしまうのでは、全く意味がない(損して損を取ることになる)。
投資では…
投資の場合
最後に、資産の投資における「損して得取れ」を考えてみよう。
この場合の「損」とは、初級~中級期の試行錯誤による損のことだ。
投資の場合には、「損をしながら学ぶ」というプロセスが必要になる。投資の参考になる良い本はたくさんあるが、実践が伴わないと、単なる畳水練程度の効果しかない。実践には失敗がつきもので、そこから学んではじめて、良い本の内容が身になり生きてくる、というフェーズに入る。
なので、投資において、「損して得取れ」は当てはまる。
損して得取れが機能する条件
まずは、損をする段階で、大きく損をしないことだ。
初級~中級期に損をするのは当たり前…だと、想定しておいた方がいいだろう。だが、そこで大きく損をしてしまうと、ダメージが深くなって、再起がむずかしくなってしまう。なので、大きく損をしないことを心がけるべきだ。※上級期でも損をするが、大部分は管理できる損になる。
続けることが大事になる
また、羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹かないことだ。
「投資をしてみたけれど、損をしたので嫌になった…」ということで、投資自体をやめる人がいる。このタイプの投資はやめる、という(限定的な)ことであれば問題ないが、投資自体をやめるのであれば問題だ(損しか残らない)。当然この場合は、「損して得取れ」は機能しない。
なので、続けることが大事なのだ。ただし、勉強しない人、自己責任ということを理解していない人、自分で投資に向かないと思う人は、傷が浅いうちにやめた方がいいのかもしれない。
損して得取れという考え方 - サマリー
まとめ
今回は、「損して得取れ」について書いた。
損して得取れ、という考え方に異論はない。正しい考え方だと思う。
ただし、それが機能する条件を満たしながら実践した方がいい、というのが、わたしの考え方だ。たとえば、人間関係では、「相手に見返りを求めない」ということだ。相手に与えた見返りを求めてしまうと、見返りがないときに腹立たしくなってしまい、マイナスの結果になってしまうのだ。
これでは、何をやっているのかわからない。上手な形で「損して得取れ」を実践したい。
今回の記事:「損して得取れ」という考え方