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ゼンコクツアー

2015年、立川吉笑はゼンコクツアーを開催します。わー。

2010年11月に入門して、
運良くなのかどうかは分からないけど2012年4月に二ツ目に昇進させて頂きました。

昇進日にお江戸日本橋亭で開催した『立川吉笑 説明会』。
たくさんのスライドを使って文字通り『立川吉笑』について説明しました。

半年後には憧れの国立演芸場で二ツ目昇進記念独演会をやらせて頂きました。
前日の夜中、眠れずに家の周りをひたすら歩いていました。

翌2013年は『3年目の吉笑』という定例独演会を上野広小路亭にて開催しました。
地に足ついた独演会をとにかくやり続けて、応援してくださるお客さんが増えるとともに会場を大きくしていって、ゆくゆくは師匠のように国立演芸場で毎月独演会を!、、と意気込んでいたものの、すぐに体調を壊してしまい4月の会を直前になって中止にしてしまいました。
図太いと思っていた自分が意外に脆いと分かって、そこから少しだけ動き方が変わった気がします。

その矢先に出会えたのが森田真生さんでした。
色々なご縁を勝手に感じ、すぐさま佐渡島まで会いに向かいました。
(佐渡島という土地もまた自分にとっては特別な場所でした)
そこで閃いた『吉笑ゼミ。』というイベントが2014年の軸になりました。
東京に出てくるきっかけを与えてくださった倉本美津留さんを第1回のゲストに。
第2回のゲストにお招きした下西風澄さんはこのイベントのアカデミック側の極地を、第3回のゲストにお招きしたMOROHAさんはエンターテインメント側の極地を、それぞれ描き出してくださいました。
「このイベントは、もしかしたら自分にしか産み出せなかったんじゃないか」と少しでも思えるということが、落語家、というか表現をする者として自信に繋がりました。

2014年は幸運なことにメディアへの出演も想像以上にさせて頂きました。
なんと言っても『噺家が闇夜にコソコソ』。師匠のバーターとは言え、ああいった場で正面から大喜利をやらせて頂けたのはとても良い経験になりました。自分の苦手な面も、そして得意な面も浮き彫りにしてくれた半年間でした。

思えば2013年末に出会った九龍ジョーさんに呼んでもらった新年最初のラジオが『九龍ジョーのポップカルチャー新年会 2014クルのはこいつだ!』というニッポン放送の番組でした。
8月にはTBSラジオの『荻上チキSession-22』にも連れていってくださいました。それだけでなく10月には改めて、しかも今度は1人で『吉笑ゼミ』をひっさげて出演させて頂きました。
その場でガチンコでゼミスタイルをやる、というとてもタフな状況で不安で一杯でしたが、蓋を開けてみれば何とかやりきることができました。アドレナリンなのかドーパミンなのか分かりませんが終わった後もとにかく脳みそがギンギンに興奮していて、小雨のパラつくなか夜通し家の周りを歩き続けて、文字通り頭を冷やしました。

同じタイミングで全く違う方向からお話を頂いて実現したのが初めての冠ラジオ番組『立川吉笑のラジオ・エピソード0』でした。そもそもは何回か落語会にいらしてくださっていたディレクターさんから「編成部が企画を募集していたので応募してもいいですか?」というメールを頂戴したのが始まりで、「無名の自分が中心の企画なんか通らないだろうなぁ」と思っていたらなぜか通り、でもクライマックスシリーズが早くに決着がつかないとオンエアされないという条件で、「どうせ無理だろうな」と思っていたら、なぜか阪神が4連勝してくれて見事オンエアされた奇跡みたいな番組でした。
この時点で明らかに「今、自分に流れが来ている」と実感できていたから、放送はそのまま流れに乗って熱量をひたすら伝える方法にしました。その結果、終わる3分前に話すことが無くなってしまい「とにかく頑張りたいんですよ!何かやりたいんですよ!!」という何の意味もない、ただ熱しかない言葉を電波に乗せてしまったのでした。

年が明けて2015年1月。
突然届いたオファーのおかげで、両国国技館で落語をやらせて頂けることになりました。
そして突然届いたオファーのおかげで、春先にはまたテレビに出演させて頂けそうだったりもします。

こうしてあっという間の4年間を文字にしていくと順風満帆のようでもあるし、
いやいや、まだまだ全然だよ、と思えたりもします。
とは言え、どうやら自分はラッキーだと言うことは間違いなさそうで、
これからも今は想像もつかないような楽しみな仕事をやらせてもらえるのでは無いかと期待している自分もいます。

偶然を重んじる僕はそういう『突然』に期待する一方で、
落語家として、そういうものに振り回されないで
地に足つけた活動をしていきたいとも思っています。

ありがたいことに、毎月開催している『談笑一門会』と『談笑の弟子!!』
ライフワークのように続けていきたい『吉笑ゼミ。』
渋谷らくごや先輩方との落語会、立川流の一門会や地域寄席などなど、
去年あたりから明らかに地に足がつき始めた自覚があります。
あとは面白い落語を提供し続けることができれば、
何とか落語家として生きていけるのではないか、と思えてすらきました。

その上で、さらにもう少し積極的に地に足つけたいと思った結果、
2015年、立川吉笑はゼンコクツアーを開催します。

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知名度も全くなく、ましてやこんなキャリアで全国をまわるなんてありえないだろう、ということは、自分でもよく分かります。
それでもゼンコクツアーをやりたくなったのです。
だからやるのです。

都内の落語会の開催数が月に900件を超えたと耳にしたのは去年末のことでした。要するに1日に30件くらいの落語会が都内近郊だけで開催されているわけです。とても多い。
それに比べて東京以外の土地で落語を聴ける機会は限られています(もちろん上方落語のある大阪は別として)。

当然、交通費や宿泊費の問題だったり普段の仕事との兼ね合いだったり、
東京近郊の落語会が多くなる理由は分かるのですが、
一方で極端に言えば着物と座布団があればどこででもできる落語の利便性を考えたら
もっともっと地方でも落語会を開催できるはずなのです。

もちろん全国各地で落語会が開催されているのは知っていますし、僕もたまには呼んで頂くこともあります。

それでも今回、僕がやろうと思っているゼンコクツアーは
これまでには無かった新しい動き方のような気がしています。

知名度や集客力、そして実力のことを考えると当たり前なのでしょうが、
地方で開催されている落語会の多くはいわゆる売れっ子の師匠方の会がほとんどです。
そして僕のような若手は師匠方に連れて行って頂く形で、お供させて頂くケースが地方で落語を演らせて頂ける場合のほとんどなのです。

特に我々若手にとっては地方で落語をやれる機会なんて滅多になく、
次にまたいつ呼んで頂けるかは分かりませんから

「とにかく自分の魅力をお客様に伝えたい!」

と、地方では失敗の可能性の低い、演りなれた得意ネタをかけることが多いです。
僕の場合は『狸の恩返しすぎ』というネタがそれにあたります。
落語界のしきたりについての説明を含んだ自己紹介的なマクラが実はネタのテーマの伏線になっていて、そこから入った噺には自分らしい切り口の笑いも何箇所かあって、なおかつ子狸のかわいさがほのぼのとした空気を産み出せるからか、幅広い年代の幅広い客層の方々に楽しんで頂けやすいこのネタは初めての場所ではとても演りやすいネタです。

得意ネタは、自分の魅力をズバッとプレゼンできる格好の素材なのですが、
一方で我々若手の魅力はそれだけでは無い気もしています。

大好きな『三文銭』というMOROHAさんの曲に、

『来た道の長さや成してきた事を「言葉の重み」というのなら、行く道の長さや目標の高さを「言葉のきらめき」とよんでやる』

というようなフレーズがあるのですが、
まさに「行く道の長さや目標の高さによるきらめき」も
我々若手の魅力なんじゃないかと思います。

日に30件も開催されている都内近郊の落語会の中には、
地元に根付いた地域寄席や売れっ子の師匠方の独演会などに混じって我々若手の定例会も少なくありません。
毎月・隔月・年4回など頻度に多少の差はあれども、たくさんの若手が自分の主戦場たるべき定例会を開催しています。落語が演りやすく、見やすく、なおかつ安く借りられる、という素敵な会場が東京にはたくさんあるから我々若手でも定例会をそんなに肩肘張らずに催すことができることは本当にありがたいことだと思います。

定例会に向けて若手は毎回毎回ネタを用意していきます。
もともと持っていた得意ネタなんかはすぐに演りきってしまうから、それ以降は毎回、自分でもどうなるか分からないけどとにかく新しいネタを仕込んで、高座にかけていきます。
上手くいく時もあればあまり上手くいかない時もあります。
でもそんな落語と正面から向き合っている姿勢が、スリリングな面白さが、
若手の会の魅力になっているのではないかと思うのです。

主に自分で作った落語を演っている僕は特にその傾向が強くて、
今では自分にとって定番ネタになっている『舌打たず』を初めて演った勉強会のこととか、反対にそれ以降1回も演っていない方向音痴をテーマにしたネタをやった会のこととか、ありありと覚えています。
『舌打たず』はドカンと受けた、方向音痴のネタはシーンと静まりかえった。
それでも、そのどちらの会も、スリリングな面白さには満ちていた自信があります。
若手ゆえに師匠方と比べたらその到達点は低いかもしれないけど、
それでも傾き(=今後への可能性)は大きいのかもしれません。

今回僕は、そんなこれまで都内でしかやっていなかった、
自分の最前線のネタを披露する会を東京だけでなく全国で開催しようと思いました。
僕がやろうと思っているゼンコクツアーがこれまでに無かった形だと思うのはそのためです。

ゆくゆくはそれこそ毎月だったり隔月だったりでやってる普段の定例会を、
東京だけでなく色々な場所でやっていければ最高なのですがそれは夢のまた夢で、
まずは年に1回か2回、劇団の本公演のような形で、
90分〜120分くらいの落語会を色々な場所でやれたらと思っています。

これって、実現したら何だかワクワクしませんか?

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当然ながらこんなキャリアの自分には運営をお願いできるようなイベント制作会社の知り合いなどはいません(規模的に商売としても成立しないでしょうし)。
なので、全部手作りで進めていこうと考えています。

9月から10月にかけて、
もともと埋まっていないスケジュールをさらに埋めないように努力しました。

現時点で決まっているのは9月1日(火)に東京でプレビュー公演を行うということ。本番に先駆けて、クローズドな状況で1度演ってみます。
1週間後の9月第2週に東京公演を開催します。たぶん2日間になると思います。

第3週末からは関西方面で開催します。決まっているのは京都大阪
京都は恵文社、大阪はできればスタンダードブックストアで開催できればと準備しているところです。

日時はまだ決まっていませんが、九州にも伺わせて頂きます。決まっているのは大好きな街、熊本。早川倉庫か長崎書店を考えています。

その他、北陸もどこかで開催できないか探っているところです。

さて、そこでなのですが、
上記のような流れに合わせて、運営の協力をしてくださる方を募集させて頂きたいと思っています。(そのための長文でした。)

ゼロから会を立ち上げるだけでも本当に労力が必要なのに、
さらに今までになかった、無名の若手によるゼンコクツアーとなれば、
本当にどうなるのかというか、そもそもそんな事が可能なのかすら分からないような状況ですが、そんな、前例のない活動の第一歩を後押ししたい、してもいい、と思ってくださる方がおられましたら

2015tour@tatekawakisshou.com

までメールを頂ければと思います。

関西と九州に伺うことは決まっているので、
例えば福岡や名古屋や広島あたりで運営を手伝ってくださる方が現れたら、
うまく日程を調整して伺いたいと思っています。

もちろんその他の場所でも構いませんし、
会の運営とまではいかなくとも「こういう場所があるよ」という情報だけでも構いませんし。
とにかく手作りで進めていくので右も左も分かっていないのが現状です。

そしてもう1点。
まだ制作期間に入っていないですが、今回のツアーは『ツアー用に用意するネタ下ろしの落語』だけでなく『映像を使ったパフォーマンス』をやるつもりでいます。
上にも書いたようにこのイベントは「自分の最前線をお見せする会を全国でも。」というコンセプトを元にしていて、ご存知だと思いますが特に僕がやりたいと思っている表現は従来の落語像とは少し距離があるものですから、ちょっと尖った内容になると思われます。

とは言え、子供から老人まで誰でも楽しんで頂ける間口の広さも、落語の特徴の1つなので、
せっかく行ったことの無い場所に伺うのだから、地域寄席のような空気感のただ楽しい落語会も時間が合えば開催したいなぁと思っています。
そちらの方も合わせてご協力してくださる方を募集しています。
よろしくお願い致します。

まだまだ決まっていないことが多くて、状況を把握しにくいかと思いますが、
とにかく第一報として、
2015年、立川吉笑はゼンコクツアーを開催する、ということだけでも宣言しようと思いました。

全国のお客様。
お近くでの開催が決まった際には、ぜひお越しください。
落語は生が一番です!

きらめきに満ちた立川吉笑の最前線をお見せできるようにしっかり準備します。

どうぞよろしくお願い致します!!