米議会でただひとり軍事力行使に
反対の票を投じたリー下院議員
(AP)
2001年9月16日 カリフォルニア州オークランド

 連邦議会でたった一人、軍事力行使の決議案に反対票を投じたのは、バーバラ・リー下院議員。もとソーシャルワーカーのリー議員は、2年前にも、米国がセルビアに部隊を投入することに、下院でたった一人で反対した人である。

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リー議員
 オークランドとバークレーというリベラル派が圧倒的に優勢な地区から選出された議員は、1998年に軍事費削減を公約として初当選。今回、ブッシュ大統領に軍事力行使の権限を認める決議が、上院では98対0、下院では420対1で可決された。
 リー議員の選挙区の人々の多くは、議員が「自分の道徳的羅針盤と良心と神の指し示すところに従って」到達した考えに賛成できないという。
「リーさんは、あの決議は『あの男』にあんまり大きな力を与えすぎるというんでしょう。それはきっとそうでしょうね」と、カリフォルニア州立大学バークレー校のそばで線香を売っていたジョージ・オドムさんは言う。「でも、それが必要なら、やらないわけにはいかないでしょう」
 下院の議場で、リー議員は、反対の理由を、自制を求めたかったのだと説明した。
「誰かが我々に『ちょっとのあいだ一歩退いて、きょうの措置がどんな結果を引き起こすものか考えてみよう、もっとことの帰結を十分に理解しよう」と言う人がいるべきです」とリー議員は言った「あまりに多くの無辜の人々が、すでに亡くなっているのです」
 議員は、かつてリンドン・ジョンソン大統領にベトナム戦争遂行の自由を与えたトンキン湾決議の例を引いた。当時あの決議に反対したのも、民主党のアーネスト・グルーニング(アラスカ)とウェイン・モース(オレゴン)というたった2人の上院議員だけだった。両議員は「歴史は、我々がベトナムで重大な間違いをしたと記録するだろう」と予告していた。
 リー議員は、ロン・デラムズ下院議員のもとで働いたあと、同議員のあとをついでカリフォルニア州の下院および上院の議員を務めた。
 有権者の一部は、リー議員こそ、選挙区の有権者の気持を代表していると言う。
「私の代わりにああしてくれたことは、ほんとうに嬉しい」と、バークレーの民衆公園で行商をするジョン・ジャストレフスキさんはいう。「私は平和を讃えたいのです。報復は明らかにこの問題を解決するやり方としては野蛮です。我々は落ち着いて、情け深くなくてはならない」
 世界貿易センターとペンタゴンへの攻撃を真珠湾攻撃になぞらえる人は多い。真珠湾攻撃も、1941年、当時の議会を即座に対日宣戦布告に踏み切らせるもとになった。
 その投票のときでも、たった一人、ジャネット・ランキン下院議員が反対した。ランキン議員は、第一次世界大戦のときも、米国の参戦に反対した。モンタナ州ミズーラ選出の共和党議員だったランキン議員は、生涯にわたる平和主義者で、暴力は人間の不和を解決しないとの信念を持っていた。
 ランキン女史は、1943年に議員を引退した。グルーニング、モース両議員は再選されなかった。リー議員の選挙区では、リー議員はたとえ自分達が反対しても、立場を明確にしただろうと、その信念に敬意を表す人が多い。
 「ああいう意見を表明するのには、非常な道徳的勇気を必要としたでしょう」と、オークランドの高級宝飾店に勤めるアンジェラ・ネヴィンさんは言う。「たとえ、あまのじゃくと言われようと、誰かが正気の声をあげる必要があるんです」
(訳 萩谷 良)

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